DLTとは?ブロックチェーンだけじゃない“分散型台帳技術”の全体像を解説

DLT

この記事ではDLTとは何か?をブロックチェーンとの関連性やこれまでの歴史を交えて解説していきます。

まず大前提、ブロックチェーンはDLT(分散型台帳技術)を使った技術の一つです。

DLT(分散型台帳技術)とは?

DLTとは「Distributed Ledger Technology(分散型台帳技術)」の略で、
複数のノード(機器)が同じ台帳を共有・合意・更新できる仕組みの総称です。

つまり、

  • データの保管構造(ブロックを鎖のように連ねたチェーン構造か、あるいはDAG(有向非循環グラフ)構造やトランザクション単位の構造か)
  • データの合意方法(PoW、PoS、BFTなど)

これらの仕組みが異なれば、ブロックチェーンではないDLTも存在します。


とはいえ、現在ではブロックチェーンが圧倒的に有名かつ普及しているため、
DLTとブロックチェーンが「ほぼ同じ意味」で使われることもしばしばあります。


ここで、「ブロックチェーンがDLTの一部なら、それ以外のDLTってどんなもの?」と気になる方もいるかもしれません。
実際、ブロックチェーンが登場する以前から“分散的に情報を扱う技術”は存在しており、それらは今のDLTと重なる部分を持っています。
また、ブロック構造を使わずに分散合意を行うDLT(例:CordaやIOTA)も存在します。

ブロックチェーンによりDLTの概念が明確に整理された。

まず、「DLT」という概念が明確に整理されたのは、ブロックチェーンの登場以降のことです。
そのため、ブロックチェーン以前にも、ノード間で台帳を共有・更新するという点で、現在のDLTと本質的に共通する分散型システムは存在していました。

ただし、現代のDLTでは、暗号技術・合意形成アルゴリズム・スマートコントラクトといった高度な技術を組み合わせることで、より高い信頼性と自律性を実現しています。

そのため、ブロックチェーン以前に存在していた仕組みも、構造としては近いとはいえ、こうした信頼性の担保機構を欠いていたことから、「現代のDLTとは異なるもの」として区別されているのです。

ブロックチェーン以前のDLT的な技術たちの歴史

「DLT(分散型台帳技術)」という言葉は、ブロックチェーンの登場以降に整理された概念ですが、
その考え方や技術的な“原型”は、すでに過去の複数の分野で存在していました。

以下に代表的な技術を紹介します。


① 分散データベース(Distributed Databases)

  • 時期:1970年代〜
  • 内容:複数のコンピュータに同じデータを保持・管理する仕組み。
  • 例:分散SQL、レプリケーション(複製データベース)など
  • 補足:企業や金融機関の業務で活用されていたが、改ざん耐性や検証機構は不十分。

② バイザンチン将軍問題と耐障害性(Byzantine Fault Tolerance)

  • 時期:1980年代〜
  • 内容:一部のノードが悪意を持っていても、全体で正しい合意に至る方法を探る研究。
  • 例:PBFT(Practical Byzantine Fault Tolerance)
  • 補足:ブロックチェーンの合意アルゴリズム(コンセンサス)の理論的土台となった。

③ P2Pネットワーク(Peer-to-Peer)

  • 時期:1990年代後半〜2000年代前半
  • 内容:中央サーバーなしでノード同士が直接ファイルや情報をやりとりする仕組み。
  • 例:Napster、BitTorrentなど
  • 補足:BitcoinのP2P設計にもこの技術が応用されている。

時系列で見るDLT発展の流れ

年代 技術/概念 説明
1970~90年代 分散データベース OracleやIBMなどの業務用途。DLTの「分散」の技術的原型。
1982年 バイザンチン将軍問題 分散合意の理論的基盤。後のPBFTなどのコンセンサス技術へ発展。
1999年 P2P技術(Napster等) ブロックチェーンのP2P基盤となる分散通信技術が一般化。
2008年 ビットコイン誕生 ブロックチェーンを用いた初の大規模かつ実用的なDLT実装。
2010年代~ 「DLT」という言葉の定着 DAGなどブロック構造を使わないDLTも登場し、用語が一般化・多様化。

これらからわかるように、ブロックチェーンの基盤は、これまでのDLT的な技術を元にして生み出されました。

現代の「ブロックチェーンではないDLT」技術とは?


まずイメージしてほしいのは、DLT(分散型台帳技術)全体が「果物」だとすると、
ブロックチェーンは「りんご」のようなものです。

りんご以外にも、みかんやバナナ、ぶどうのような“他の果物”は存在しますが、
ブロックチェーン以外のDLTの多くは、正式な名前が広く知られていない構造や設計になっています。

この中で、「DAG(有向非巡回グラフ)」という構造は、ブロックチェーンとは異なる代表的なDLTの一つとして位置づけられています。
しかし、それ以外のDLT(例:CordaやHyperledger Fabricなど)は、プロジェクトごとに独自の構造設計を持っており、チェーンやDAGのように一般化された名前はありません。

また、ブロックチェーンからはビットコインやイーサリアムのような多数のプロジェクト(=“レシピ”や“料理”)が誕生しましたが、
他のDLTからは、そうした広く普及したアプリケーションはまだ少数派です。

つまり、ブロックチェーンはDLTの中でも“汎用的かつ再利用しやすい土台”として使われてきたのに対し、
その他のDLTは、特定の用途に特化した“オーダーメイドの構造”が多く、派生プロジェクトが少ないのです。

そのため、ブロックチェーン以外のDLTについては、プロジェクト名よりも単に「DLT」と呼ばれるケースが多く見られます。

ブロックチェーン以外のDLTの構造と特徴を、果物の例えを使って整理してみましょう。

果物(DLT) 種類(構造) 実例(プロジェクト) 概要
🍎 ブロックチェーン ブロック+チェーン構造 Bitcoin, Ethereum, NEM 一番有名。ブロックを鎖状につなげる。
🍊 DAG グラフ構造 IOTA, Nano チェーンでなく網状。高速で軽量。
🍌 その他DLT 独自設計 Hyperledger Fabric, Corda, Interledger 企業用、台帳共有が主。非チェーン型もある。
プロジェクト名 開発開始 公開年 説明 ブロックチェーンとの関係
Bitcoin 2008年 2009年 ブロックチェーンの原点 起点(すべてはここから始まった)
Ripple / Interledger 2012年(Ripple)
2015年(Interledger)
2015年 異なる台帳をつなぐプロトコル ブロックチェーン技術を応用しつつも独自構造
Corda 2015年 2016年 金融業界向けDLTプラットフォーム 「ブロックチェーンではないDLT」を標榜

今回は、DLTという技術の全体像と、ブロックチェーンとの関係、そしてその歴史的背景について解説しました。
DLTには、ブロックチェーンだけでなく、DAG構造を採用したものや、独自の設計を持つ企業向けのシステムなど、さまざまなバリエーションが存在しています。
それらを理解することで、DLTの可能性をより広く捉えることができるでしょう。

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